1997年米国の厚生労働省に当たる米国医療政策研究局(FDA)が『急性腰痛に対するガイドライン』を作成したのですが、この中で今まで腰痛に対して有効であるとされてきた治療法のほとんどが、科学的根拠に乏しく、無効あるいは不適切とされてしまいました。
急性腰痛とは、簡単に言うと3ヶ月以内に治ってしまう腰痛を指し、脚の痺れや痛みを伴う坐骨神経痛も含まれます。腰痛の90%は急性腰痛であると言われています。
この急性腰痛に対して行われている治療法を、有効の順からA・B・C・Dの4ランクに分けて判定したのですが、Aランクとされた治療法は今のところ無く、整形外科で広く普及している牽引・マッサージ・温熱療法・低周波療法・コルセット・固定バンド等の数々の療法がC及びDランクという驚くべき調査結果が出たのです。
なぜ、このような事態が生み出されてしまったのでしょうか。
それは、ほぼ全ての腰痛の原因が、最新の検査機器による画像診断(レントゲン・MRI等)で特定できないからです。つまり腰痛は、どこかが壊れて起こる痛み(器質疾患)ではなく、ある機能を十分に行うことができなくなる状態(機能疾患)であり、この機能疾患を探り当てる検査機器が今のところ開発されていないからです。
このガイドラインによれば、『消炎鎮痛剤・スピナルマニュピレーション(脊柱に対する徒手療法)・負担の少ない運動療法』がBランクと判定され、今のところ急性腰痛に対して最も効果のある治療法として認められたのです。